父と子、憎しみと愛 〜フォルクレ父子のクラヴサン作品集♪

ブランディーヌ・ランヌーによるフォルクレのクラヴサン作品集♪


┃父を脅かす息子、子を喰らう父。

サトゥルヌスやオイディプスに限らず、父と子が殺し会うという主題は神話の世界ではよく見られます。

けれど、それが現実だったらどうでしょう。

現代では悲しいかな、時おりそんなニュースも目にしますが、作曲家のなかにもそれに近いことになった親子が…。


今日は先日 中古屋さんで入手した、面白い物語をもつ親子の一枚。



226.jpg

アントワーヌ・フォルクレのヴィオール曲集
ジャン=バプティスト・フォルクレによるクラヴサンへの編曲版
・第5組曲 ハ短調
・第2組曲 ト長調
・第1組曲 ニ短調
・第3組曲 ニ長調
・第4組曲 ト短調

ブランディーヌ・ランヌー(クラヴサン)
2007年録音 ZigZag territoires




┃フォルクレ氏。

父の名はアントワーヌ・フォルクレ(Antoine Forqueray, 1671頃 – 1745)。

バロック好きにはおなじみですが、フランス・バロック音楽にあって、ヴィオールの演奏で「天使のマレ、悪魔のフォルクレ」と言われたほどの名手でした。

喩えれば(時代が前後しますが)、フォルクレはヴィオールのパガニーニと言ったところでしょう。

秘密主義で自作の出版はせず、鬼気迫る演奏をくりひろげるヴィルトゥオーゾだったようで、今でも彼の作品はヴィオールのなかでももっとも技巧的な作品群とれているようです。


彼は宮廷の音楽家として演奏活動を行うまでになりますが、猜疑心が強かったのか、同じヴィオール奏者として名声を得ようとしていた息子、ジャン=バプティスト(Jean-Baptiste Forqueray, 1699 – 1782)に対して(一説では投獄や追放までこころみるなど)さまざまなひどい仕打ちをしたと伝えられています。

彼は妻の弾くクラヴサンと合奏することが多かったようですが、その妻ともうまくいかなくなり、結局別れます。そういったことも背景にあって、複雑な心境だったんでしょうかね? それにしてもひどすぎる…。


さて、バプティストとはどうしたか。

いろいろ葛藤があったでしょうが、父の死後、その作品が忘れられることを惜しんで、そのヴィオール曲集と、それから自らクラヴサン用に編曲したものを1747年に出版しました。

単に生活のためか、それとも音楽への愛が憎しみに勝ったのかはわかりませんが、彼が出版しなかったら、フォルクレは名前だけが伝えられる存在になっていたか、すっかり忘れ去られていたかもしれません。

なかなかのドラマです…。


AForqueray.jpg 父 Antoine




┃鬼気迫る、スケールの大きなフォルクレ!

今日の一枚は、フランスのクラヴサン奏者、ブランディーヌ・ランヌーがクラヴサン編曲版のフォルクレ作品を録音したもの。

ランヌーはパリ国立高等音楽院やスウェーリンク音楽院で学んだ女性奏者。ラモーやバッハなどの作品がOutheeから出ています。

ここではまず、ハ短調の組曲(5番)をはじめとして、短調の作品がデモーニッシュな魅力と演奏のスケールの大きさで聴き手を圧倒します。大組曲とでも名付けたいほど!

フォルクレは悪魔に例えられるほどですから、気性も荒かったと言われていますが、それも頷けるというもの。彼が活躍したのがロココ華やぐフランス宮廷だということがウソに感じられるくらいの迫力です。


ちなみにこのディスクは2016年に新装でリイシューされて今でも入手可能です。嬉しい限り♪

フランス器楽史に燦然と輝くヴィルトゥオーゾの名盤!


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▼Blandine Rannou - Forqueray - Jupiter


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シノーポリ&ニューヨーク・フィルのワーグナー(1985)♪

シノーポリ&NYPの精緻かつ豊潤なワーグナー♪


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ワーグナー:
・「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
・「さまよえるオランダ人」序曲
・ジークフリート牧歌
・「ローエングリン」第1幕への前奏曲
・「ローエングリン」第3幕への前奏曲

 ニューヨーク・フィルハーモニック
 ジュゼッペ・シノーポリ(指揮)
 1985年デジタル録音 DG
 試聴する!



┃ニューヨーク・フィルとシノーポリ。


たしか、シノーポリ(Giuseppe Sinopoli、1946 - 2001)はニューヨーク・フィルとけっこうな録音を残したはず。

今日のワーグナーのほかにも、ムソルグスキーの「展覧会の絵」や、レスピーギの「ローマ三部作」、シュトラウスの「ツァラトゥストラ」なんかがあったと思います。

そんなこんなでリアルタイムではない僕は、てっきりシノーポリはニューヨーク・フィルのなんらかのポストについていたんだと思っていたんですけど、そうじゃないんですねぇ。以外。

バーンスタイン以後のニューヨーク・フィルの指揮者は

 ・ジョージ・セル(1969-1970) 音楽顧問
 ・ピエール・ブーレーズ (1971-1977)
 ・ズービン・メータ (1978-1991)
 ・クルト・マズア (1991-2002)
 ・ロリン・マゼール(2002-2009)
 ・アラン・ギルバート (2009-2017)
 ・ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン(2018-)

という感じ。ブーレーズはソニーへの多くの録音で一時代を築きましたが、メータ時代は13年もあるのにわりあい印象にありません。

日本で人気がないという点ではマズアもそうでしょうが、マズア+ニューヨーク・フィルは僕は好きで、以前少し取り上げました。

マゼール時代になると、CD録音そのものが不景気になってしまったので、数は少ないですが、ラヴェルやシュトラウスのなかなかの録音がありました。

ギルバートは初のニューヨーク出身の音楽監督として注目されましたが、録音ではパワフルなニールセンだけが成果。

こうしてみると、名門の地位を保つためには、そろそろ10年をこえるカリスマ指揮者の時代がほしいところ。2018年から就任予定のズウェーデンに期待が膨らみます!


┃抜群の相性♪

1985年ですから、"地味な"メータ時代の録音ということになる今日の一枚。

これはすごいです。

シノーポリの音作りは、基本的に20世紀的なビブラートたっぷりでつやのある心地いいものですが、よく聴くとどんなフォルテの場面でも、管楽器など、ちゃんとオーケストラの音が多層的に聴こえるというもの。

これの際たるものがマイスタージンガーのプレリュードで、なんとちゃんとハープが聴こえる!

じつはこの勇壮な音楽のテーマのところは、ハープも必死に弾いてるのに、動画とかでもめったに映らないうえに、録音でもよっぽど意識して聴かないかぎり自然に耳に入ってくることなんてまずないのに…。

これがテクノロジーのおかげなのか、シノーポリの手腕なのかはナマを聴いた人しかわからないでしょうが、この録音を残してくれただけで感謝ですね!


ジークフリート牧歌は19分半という時間をかけて奏でられますが、聴いていると決して遅いと感じることはなく、むしろこれ以外のテンポはありえないと感じる説得力をもっています。

こういう言い方は失礼ですが、デジタル録音時代の数少ないニューヨーク・フィルの名盤でしょう。
抜群の相性を感じる すばらしい一枚!


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[タグ] ロマン派 オペラ
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エルガーで前向きに♪~エルダー&ハレ管弦楽団の序曲「コケイン」

黄金時代のつづくマーク・エルダー&ハレ管のエルガー♪


年度末が忙しいわが社は、もちろんプレミアム・フライデーは関係なし。そんな忙しい日々だからこそ、支えになる音楽は重要です!



┃やっぱり威風堂々♪

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エルガー:
・海の絵 Op.37(2014年8月録音)
・ポローニア Op.76(2012年2月録音)
・威風堂々(全5曲) Op.39(2012年2月録音)
 ハレ管弦楽団
 マーク・エルダー(指揮)




最近、僕の精神衛生を支えているのは、エルガー(Edward Elgar, 1857 - 1934)の音楽。

エルガーの音楽って、はじめチェロ協奏曲とかから入ると、なかなかに憂鬱な音楽なので、ほかの曲を聴くとそのイメージの違いに驚かされます。

やはりチェロ協奏曲、エニグマ変奏曲とならぶ彼の代表作は、威風堂々(Pomp and Circumstance)でしょう。

第1番と第4番がお気に入りですが、僕が好きなエルダー&ハレ管のコンビが2012年に録音した全集(第1番~第5番)は、はじけるリズムと、中間部の"Land of Hope and Glory"の旋律のあたたかさが絶妙♪ やっぱり、いい曲だなぁ…。気分が前向きになります。 

輝かしい未来だあああああああ!!!

ポローニア(Polonia)」は委嘱により書かれた作品で、ポーランドを讃える音楽なので、これまた前向きになれる。たしかラトルが「エルガーは普通に振ればオケがよく鳴るように書かれている」的なことを言っていたけれど、ここでも非常に生き生きとした管弦楽がたまりません♪


▼Edward Elgar, Pomp & Circumstance No. 4




┃われらが素晴らしき首都。

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エルガー:
・エニグマ変奏曲(2002年10月ライヴ)
・弦楽セレナード(2002年2月録音)
・演奏会用序曲「コケイン」(2002年2月録音)
・朝の歌(2002年2月録音)
・エニグマ変奏曲~フィナーレ(オリジナル版/世界初録音/2002)
 ハレ管弦楽団
 マーク・エルダー(指揮)




そして、最近ハマっているのが序曲「コケイン」(Cockaigne Overture)。

「コケイン」という名前についてはWikipediaが詳しいです。

コケイン(Cockaigne)とは、理想郷を意味する中世フランス語païs de cocaigne(満ち足りた土地)に由来する語で、1820年代にふざけてロンドンの(特に下町の)隠喩として使われるようになった。エルガーの時代には、コケインという語はモラリストによって大食漢や酔漢の暗喩として使われたが、一方でロンドンのユーモラスな別名でもあり続けた。ロンドンの下町訛りを指してコックニーと言うのも、コケインに関連する(コックニーが先にあり、後から「コックニーの土地」という意味で古い言葉を復活させたとする説がある)。「首都」とする訳語は、したがって原語よりも堅苦しく響くかもしれない。
 (Wikipedia


当時のロンドンを得意の色彩溢れるオーケストレーションと、威風堂々も真っ青のスーパー・オプティミスティックな主旋律を駆使して、エルガーが共感いっぱいに描いた傑作。

ハレ管の明るい音と、生き生きと跳ねるリズム、そして抜けのいい録音も相まって、本当に楽しい時間をすごせます♪

よしっ。明日からもがんばるかなっ!


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▼Edward Elgar: Cockaigne (In London Town) Concert Overture, Op. 40



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ぺぇたぁ

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“いつも新しい“クラシック音楽の豊かな森を探検するブログ♪埼玉在住・86年生まれの会社員が古楽から現代音楽まで、
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