地力。 ~ 指揮者バレンボイムとシュターツカペレ・ベルリン

ブルックナーの交響曲全集&
バティアシュヴィリのチャイコフスキー&シベリウス♪





┃指揮者ダニエル・バレンボイム。


僕はバレンボイム(Daniel Barenboim, 1942-)はピアニストとしての方が優れているとずっと思っていた。どの録音がと言われると、なかなか難しいのだけれど。

そもそも、デュプレがまだ生きていた時からバレンボイムが今の奥さんとつきあっていたという話をきいて、あまりいい印象を抱かなかった気がする。僕もまだ若く、まっすぐだったというわけです…笑

それでも、バレンボイムのピアニストとしての演奏はときどき耳にし、そのたびに感銘を受けてきたと思う。第一印象がよくないのに感心させるとは、なかなかにすごい演奏だったんでしょう。

それにくらべると、指揮者としての彼の演奏はあまり記憶にない。たぶん、僕が興味をもつことが多い比較的新しいデジタル録音の時代に、彼がワーグナーのオペラ全集とかに取り組んでいたせいだと思う。

それと、あまりに世間の評判のいいものは好かないという、この まがりまくった根性のせいでもあるかもしれないが、そうじゃないかもしれない。

いずれにしても、指揮者バレンボイムは僕にとってはまだ、「聴きつぶした」存在ではない。



┃バティアシュヴィリとのチャイコフスキー&シベリウス♪



・チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.35
・シベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調 op.47
 リサ・バティアシュヴィリ(ヴァイオリン)
 シュターツカペレ・ベルリン
 ダニエル・バレンボイム(指揮)
 2015年6-7月、ベルリンでの録音 DG



きっかけは、フ●テレビではなくバティアシュヴィリ(Lisa Batiashvili、1979-)とのコンチェルトだった。

このディスクはけっこう最近試聴。僕はライヴ録音が好きだから、スタジオ録音かぁ…とは思ったものの、バティアシュヴィリは好きなヴァイオリニストなので期待して聴いた。

チャイコフスキーはコパチンスカヤとクルレンツィスのディスクが非常に印象深いもので、チャイコフスキーの音楽からフォークロア的なプリミティヴィズムを見いだしていたのに対して、こちらはその真逆で、20世紀を通じてつちかわれた演奏芸術の伝統の延長線上で真っ向勝負した演奏、という印象。

バティアシュヴィリのヴァイオリンは、いつにもまして力強く豊かなのが素晴らしい♪ そしてスタジオ録音なのに途切れない集中力の高さに脱帽!

そしてもうひとつ印象に残ったのは、シュターツカペレ・ベルリンの素晴らしさ。僕はなんとなくもっと「もっさり」と重たい演奏を想像していたのだけれど、いい意味で裏切られた。



┃ベルリンでのブルックナー全集(2010-2012)。

222.jpg

・ブルックナー:交響曲第1番~第9番
 シュターツカペレ・ベルリン
 ダニエル・バレンボイム(指揮)
 2012年6月、ウィーン、ムジークフェライン(第1-3番)
 2010年6月、ベルリン、フィルハーモニー(第4-9番)
 すべてライヴ録音 DG




そして、そのいい印象をもって今度出たブルックナーの交響曲全集(1番-9番)を購入した。

まだ4番と6番しか聴いてないけれど、コンチェルトのCDで聴いたこのオケのいいところは、ここでも健在だ。

とくに変わった演奏というわけではない。ここで僕がいいなぁ…と感じたのは、リズムの跳ね方とか、管と弦のバランスとか、フレーズの"入り"や"おわり"の丁寧さとか、そしてカンタービレの歌い方や音色の美しさとか、そういったどちらかというとベースの部分、基本的な部分。

だから、もちろんいい演奏ではあるのだけれど、「いい演奏だなぁ」というより、「いいオケだなぁ!」という印象が強かった。

正直いって、このベルリンのオケは、シュターツカペレ・ドレスデンやベルリン・フィルに比べたら「メンデルスゾーン」とか「世界最高」とかのうたい文句もないし、地味な存在でしょう。

でもこの2つのディスクを聴いて、ほんとうにいいオケだなぁ…と思った。ごまかしのきかない、「地力」の部分がしっかりとあるオーケストラ。

そしてバレンボイムも見直した。これからも、このオケで録音をつづけてくれるといい!


にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村

▼Lisa Batiashvili & Daniel Barenboim - Tchaikovsky/Sibelius - Violin Concertos (Trailer)


▼Anton Bruckner Symphony No. 4 in E flat major - Daniel Barenboim and Staatskapelle Berlin


関連記事
スポンサーサイト

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

情熱か平穏か ~ ドヴォルザークの傑作オペラ「ルサルカ」♪

ニールンド、ベチャワ、ウェルザー=メスト&クリーヴランド管の『ルサルカ』♪


221.jpg

ドヴォルザーク:歌劇「ルサルカ」全曲
 カミッラ・ニールンド(S ルサルカ)
 ピョートル・ベチャワ(T 王子)
 アラン・ヘルト(Bs ヴォドニック・河童)
 エミリー・マギー(S 外国の令嬢)
 ビルギット・レンメルト(Ms イジェババ・魔法使い)
 アダム・プラチェツカ(T 森番)
 エヴァ・リーバウ(S 皿洗いの少年)
 アンナ・プロハスカ(S 第1 の木の精)
 ステファニー・アタナソフ(S 第2 の木の精)
 ハンナ・エステル・ミニュティロ(Ms 第3 の木の精)
 ダニエル・シュムッツハルト(Br 猟師)

 クリーヴランド管弦楽団
 ウィーン国立歌劇場合唱団
 フランツ・ヴェルザー=メスト(指揮)
 2008年8月17日 ザルツブルク,モーツァルト・ハウス(旧祝祭小劇場)
 (ザルツブルク音楽祭におけるライヴ・デジタル)
 Orfeo




┃オペラは嫌いだけど好き。

僕はあまりオペラを見ない。が、聴くのは嫌いじゃない。なぜって王子やヒロインのたるんだお腹を見なくて済むぶん、聴き手が自由にイメージを膨らませることができるのがいい。それに、今にも病気で死にそうなヒロインがとても色つやが良くふくよかだったら…ねぇ…。

それから僕は古臭い人間なので、「読み替え演出」も好まない。

読み替え演出は物語の主題の核心を、現代のシチュエーションにおきかえることで、いつごろから流行り出したのだろう? 現代ではあたりまえで、なかには話題になるものもある。

たとえば今日の題材である「ルサルカ」で言えば、最近は水の精たちを娼婦に見立てるのが流行らしく、DVDになったバイエルン国立歌劇場のクシェイ演出や、そして今日の2008年のザルツブルク音楽祭でのヨッシ・ヴィーラー&セルジョ・モラービトの演出もそうらしい。

僕が読み替え演出がキライなのは、聴き手に解釈を限定させるもの以外のなにものでもないから。結局、読み替えた時点で演出家の解釈が入り込んでいる。オペラとはそもそもそういうものだと言われれば、だから僕は観るのは好きじゃないが、聴くのは好きと答えるほかない。

僕が興味があるのは、演出家がどう物語を解釈したかではなく、音楽がどう物語を描くか、だけ。結局、議論は何百年もまえから繰り返されてきた、言葉が先か、音楽が先かというところへと戻って行ってしまう。


それに、僕が好きなオペラはドビュッシーの『ペレアスとメリザンド』や、ドヴォルザークの『ルサルカ』、それにモーツァルトのいくつかの作品と、非常に偏っている。ワーグナーは管弦楽曲は聴くけれど、全曲はとても…。

モーツァルトは別として、ペレアスやルサルカはめったに新譜が出ない。だから、必然的に取り上げることもほとんどなくなってしまう。悲しいかな。



┃ルサルカ。

1stPRusalka.jpg
▲1901年の初演舞台から(プラハ)


『ルサルカ』の台本はヤロスラフ・クヴァピルという若い作家が書いた。もともと水の精の伝説はヨーロッパ各地に古くからあり、ウンディーネ、メルジーネ、ルサルカ、ローレライなどが生み出された。

クヴァピルもドゥ・ラ・モット・フーケーという人の小説から自由に素材を選び出し、ロルツィングのオペラ『ウンディーネ』やアンデルセンの『人魚姫』からも影響を受けたらしい。なかでもハウプトマンの『沈める鐘』からは場面やセリフがそのまま引用されているという*。

このオペラのあらすじはWikipediaを見てもらえばいいが、ほとんど日本人の知る『人魚姫』そのまま。


ちょっとFさんふうに解釈すると、ヒロインが人魚の姿から2本足の人間の姿になりたがるというのは、好きな人に足を広げたいという乙女の真理。それから声は髪などと同じく女性の美しさと意志の象徴。

ヒロインは恋の衝動に突き動かされるあまり、自分のありのままの姿を受け入れず、違うようになりたいと望んでしまう。
自分固有の美しさ(そして意志)である声を失ったヒロインは、ほんとうの自分を恋人に理解されることはなく、不幸な結末へと至る…。


┃ドヴォルザークの音楽。

けれど、ドヴォルザークはそんな風には描かない。ワッサーマンは繰り返し人間を「けがれ、呪われた」存在だというけれど、ドヴォルザークはちゃんと森番や調理人にもそれなりの音楽を付けている。

そして印象的なのが、物語がどんなに深刻な場面でも音楽がつねに美しいということ。

これはドヴォルザークの天才なのだけれど、ルサルカが呪われたあとも夕焼けは美しいし、森の精たちの音楽は輝きに満ちている。極めつけはやはり『月に寄せる歌』でしょう。ルサルカをあらわすライトモティーフとハープにのって、憧れゆえの苦悩を歌うアリアはほんとうに素晴らしい。


そして裏切られ、女でも妖精でもなく、生きても死んでもいない存在になったルサルカが最後に願うのは、神の人間の魂への憐れみ。

  愛、美しさ、そしてはかない人間の情熱。
  わたしはすべてを捧げた、そうしたすべてに!
  神よ! 人間の魂を憐れんでください!


この台本は、ドヴォルザークの人生肯定的な音楽によくあっている。非常に優れたものというわけではなくても、ドヴォルザークの霊感を刺激したことは間違いない。


演奏もなかなかにいい。ニールンドのルサルカは感情過多でも中性脂肪が多過ぎでもなく、適度な繊細さと情熱を併せ持っている。リリックのベチャワは典型的な愚かな王子の"青さ"をうまいこと表現している。

そしてウェルザー=メストがわざわざアメリカからつれてきたクリーヴランド管弦楽団も、アンサンブルにキレがあってなかなか。メスとの指揮もあって、全体としてシャープで緊張感のとぎれない音楽運び♪


  *   *   *


ワッサーマンは常にルサルカのことを「可哀想な娘」と言う。けれど、そうだろうか。

ワッサーマンは古い父親そのものだ。女が世の中にでると幸せを得られないという、昔は日本にも根強くあった封建的な父親考え方。それでも自由をもとめ、情熱にあこがれ、そして敗れた娘。

最初から不幸を回避して何も経験しないのと、経験して敗れるのと、どちらが幸せなのだろう?


ドヴォルザークの音楽はそういったものをすべて包み込んでしまうような、大きな自然愛に満ちた美しさを湛えている…。


にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村

*クルト・ホルノカ『大作曲家ドヴォルザーク』音楽之友社1994第1刷

→YouTubeで「ルサルカ」を検索!
YouTubeで「月に寄せる歌」を検索!


関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ダンスは人生を変えられる!~スティーブ・エリアスのOur Dancing Town

スティーブ・エリアスのOur Dancing Town が楽しい!


┃Our Dancing Town

最近、YouTubeを観ていたら、なんだかおもしろい動画を見つけた。




目をうばわれる美しい街並みを背に、それぞれのユニフォームで楽しげに踊る老若男女。

踊りのキレからすると、どうやらプロではなさそうだけれど、とても楽しげで、こちらも愉快な気分になってくる。


調べてみると、この動画はBBCのドキュメンタリー「Our Dancing Town」という番組で制作されたもの。

スティーブ・エリアス(Steve Elias)という振付師がヨークシャーの街を回り、ごくふつうの人々にダンスで街の素晴らしさを表現しようと呼びかける。

ちょっと前にギャレス・マローンの合唱のドキュメンタリーが日本でもBSで放送され好評でしたが、それのダンス版と言えるでしょうか。

 *   *   *   *

ヨークシャーはイギリス北部にある自然豊かなカントリーサイド。スティーブはここの4つの街で、商人や農業者、ホテルのスタッフや清掃婦、ショップの店員、引退した老婦人などに声をかけていきます。





最初はこんな感じでなかなか相手にしてもらえませんが、少しずつ協力者も増え、パフォーマンスも現実味を帯びていきます。

そういうなかで、昔はあったものの、次第に失われていった他業者間のつながりやコミュニティーについて語られたり、あるいはひとりひとりがもつ物語が語られてゆきます。

これは観ていてとてもスカッとする番組でした。街のみんなが笑顔で楽しげに語り合う、それを見ているだけで十分に楽しかった。


┃テレビって…。

日本ではテレビ離れが叫ばれて久しい。テレビ業界はネット動画が普及したことなどを理由の第一に挙げているけれど、はっきり言ってしまえば、人々がテレビを見ないのはテレビがつまらないからじゃないでしょうか。

これは素人の考えですが、日本のテレビ業界は芸能人を養っていかなければならないから、バラエティーは芸能人がふざけている姿を放送するし、ワイドショーは芸能人の"専門的な"コメントがつくし、旅行番組も芸能人が温泉に入る。

でも、視聴者は面白いもの、興味深いものを観たいのであって、芸能人が見たい人って、実際そんなに多くないんじゃないでしょうか。

この国は経済が第一だから、きっとそういう利権構造がガチガチであたりまえになってる。ほんとうに面白いものを創りたい人がいても、活躍しづらいんじゃないでしょうか? まぁ、素人の想像ですけどね。


┃楽しいことは、いい!

話を戻すと、こういった番組からは希薄になった現代のコミュニティーを何とかしたいとか、地方の魅力を伝えたいとかいう意気込みも伝わってきます。

そして何より、みんな楽しそうだから見てる方も楽しい!

さらにスティーブのちょっとコレオグラファーなのに?な体型が愛らしくてたまらない。

僕も踊っちゃおうかな?

何がおどれるのかって?





小躍り?


にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村

→BBC2 "OUR DANCING TOWN"

▼Barnsley dances! - Our Dancing Town: Episode 1 - BBC Two


▼Skipton dances! - Our Dancing Town: Episode 2 - BBC Two


▼Huddersfield dances! - Our Dancing Town: Episode 3 - BBC Two

[タグ未指定]
関連記事

テーマ : ドキュメンタリー
ジャンル : テレビ・ラジオ

プロフィール

ぺぇたぁ

Author:ぺぇたぁ
“いつも新しい“クラシック音楽の豊かな森を探検するブログ♪埼玉在住・86年生まれの会社員が古楽から現代音楽まで、
名曲・名盤から秘曲までを楽しみます♪動画、ライヴ音源、視聴も。

ブログランキング参加中。
カレンダー(月別)
01 ≪│2017/02│≫ 03
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 - - - -
最新記事
カテゴリ
おすすめネット配信♪
最新コメント
来い来いカウンター
recommend。
タグ

オーケストラ 20世紀の音楽 ピアノ バロック 交響曲 声楽アンサンブル・合唱 近代フランス音楽 ヴァイオリン バッハ ロマン派 古典派 トランスクリプション 北欧 ロシア 東欧 チェロ 教会音楽 ベートーヴェン モーツァルト バレエ 弦楽四重奏 クリスマス ピリオド楽器 管楽器 マーラー シューベルト 新古典主義 レクイエム フランス・バロック ギター リュート 歌曲 初期バロック歌曲 現代音楽 バロックオペラ ドビュッシー 国民楽派 近代イギリス音楽 クラリネット ルネサンス・ポリフォニー 4手・連弾&2台ピアノ トラッド/フォーク ブルックナー 邦人音楽家 ブリテン オペラ オルガン オーケストラ歌曲 フルート 新ウィーン楽派 ヴィオラ イギリスの音楽 アメリカの音楽 ラテン系 リコーダー パーカッション 中世の音楽 前古典派 復活祭 カウンターテナー/カストラート ピアノ・トリオ ラテン 弦楽合奏 アコーディオン ハープ トランペット 劇音楽 クロスオーバー ジャズ トロンボーン ヴィオラ・ダ・ガンバ 

検索フォーム