モンテヴェルディ (1)イタリアにおける初期オペラの展開。

巨人モンテヴェルディ生誕450年。

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今年はバッハと並ぶ音楽史の巨人、クラウディオ・モンテヴェルディ(Claudio Monteverdi, 1567 - 1643)の生誕450年!

とはいっても、バロックを切り開いたモンテヴェルディは、バロックを総括したバッハにくらべて、音楽ファンが彼の作品に親しむ機会はずっと少ないんじゃないでしょうか。

僕も「聖母マリアの夕べの祈り」やいくつかのマドリガーレ、そして「音楽の諧謔」などの作品には接したことがあるものの、オペラ全部を聴いたというのは実は最近まで一度もありませんでした。

こんな巨人の音楽を聴きもしないでクラヲタを名乗るのは憚られるので、せっかくの機会ということで彼の現存する3つのオペラ「オルフェオ」「ウリッセの帰還」「ポッペアの戴冠」を聴いてみたいと思います。

30歳の夏休みの自由研究は、「モンテヴェルディとイタリア初期オペラの展開」といったところでしょうか。

でもその前に、1600年前後にオペラが生まれたときの状況について、少し予習をしてみます♪



┃オペラの生誕と3つの都市。

  
ロラン=マニュエル著「音楽のたのしみ IV」
吉田秀和訳 白水ブックス



オペラの歴史をお勉強するに当たり、ロラン=マニュエル著「音楽のたのしみ IV オペラ」を参考にしました。

この本はフランスの作曲家で音楽学者のロラン=マニュエル(Alexis Roland-Manuel, 1891 - 1966)が1950年ころに放送したラジオ番組を文字に起こしたもので、吉田秀和の訳で白水ブックスから刊行されています。

相方の女性と、毎回変わるゲストとの対話形式の文章を楽しみながら、非常に深い見識に触れられる素晴らしい本で、I~IVまででてます。超オススメ。


さて、肝心のオペラ誕生の歴史ですが、3つの都市が重要な役割を果たします。

①フィレンツェ

まずはもちろんフィレンツェ。

フィレンツェは15世紀にはルネサンスの中心として栄えます。

当時の、ギリシア・ローマの古典文芸や聖書原典の研究を行う人文主義者たちのサークルに、ジョヴァンニ・デ・バルディ伯爵の邸宅で行われていた「カメラータ・デ・バルディ」がありました。

彼らはギリシャ音楽がそうであったと想定して、ルネサンス期のポリフォニーの遊戯から脱して、より劇的な表現にむいた簡素な様式、―つまり単旋律をバスが支える― モノディー様式を推進します。

カメラータの人々は劇や詩を重要視ししたため、重要な音楽の技法として、レチタティーヴォが生まれます。こういった様式をこの本では「劇的表現様式」と呼んでいます。


②ローマ

一方、教皇領の首都として栄え、15世紀末にはフィレンツェにかわってルネサンスの中心地となっていたローマ。そこではバルベリーニ家を中心とする絶大な力をもった貴族をパトロンとして、初期のカンタータが上演されていました。

初期のカンタータもモノディー様式によっていましたが、単一アリアの作品と、複数のアリアとレチタティーヴォからなるものがあったそうです。

ここで重要なのはフィレンツェが劇の真実味を追い求めたのに対して、ローマの趣味は「アリア」であり、より装飾的で華やかな「歌」にあったということです。


③ヴェネツィア

ヴェネツィアは別の面でオペラの歴史に大きな役割を果たします。音楽の大衆化という面で。

1637年にはじめて公衆を対象としたオペラ劇場、サン・カッシアーノ劇場ができます。これ以後パトロンに財源を求めるのではなく、入場料で財源をまかなう独立したオペラ劇場があちこちにできていくようです。まさに大衆化のはじまりですね。

そうして大衆を相手にすることになったオペラという商売において、音楽趣味はより華やかな方へ―劇的表現様式よりもローマ趣味の方へ―と傾いていきます。


こういった変化する趣味のなかで、2つの様式を統合し、さらに次の時代を方向づける天才が現われます。

それが、最初のオペラ「オルフェオ」から30年以上経てなお衰えぬ創作意欲をもった老巨匠、死の数年前のクラウディオ・モンテヴェルディその人でした!


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次は「オルフェオ」を聴いてみたいと思っています♪

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▼Monteverdi: L'Incoronazione di Poppea "Pur ti Miro" _ Max Emanuel Cencic- Sonya Yoncheva


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バレンボイム&SKDのブルックナー交響曲第5番♪

ますます躍動するバレンボイム。


今年の11月で75歳になるバレンボイム。今年のプロムスでもファーストナイトにつづくトップバッターとしてSKDを率いて登場。最近録音もしたエルガーを聴かせてくれて、まだまだこれから!と言わんばかりの精力的な活躍を見せてくれました。




というわけで今日はバレンボイムとSKDのブルックナー全集から第5番を。



222.jpg

・ブルックナー:交響曲第1番~第9番
 シュターツカペレ・ベルリン
 ダニエル・バレンボイム(指揮)
 2012年6月、ウィーン、ムジークフェライン(第1-3番)
 2010年6月、ベルリン、フィルハーモニー(第4-9番)
 すべてライヴ録音 DG




勝利への力学。

この第5番の演奏はなかなかに素晴らしいものでした。

第5はなんといっても終楽章のフーガ→2重フーガからの輝かしい音像が特徴。ふつうなら丁寧にじっくりと進んでいきたくなるところですが、バレンボイムはそうはやらない。

オケの弾力あるサウンドを生かして、躍動感に満ちた足取りでどんどん進む。

4~9番を1ヵ月の間にライヴ録音するというなかなかに強硬なスケジュールもあってか、ときにアンサンブルの乱れもちらつきますが、全体の流れの自然さと音楽自体の魅力がそれを補って余りありますね!

シュターツカペレ・ベルリンというと、僕はスウィトナーとの静的で楷書風の演奏のイメージがあるんですが、ここではドイツの古豪らしい深い響きにバレンボイム一流の前進する力学が加わって、エキサイティングなライヴに仕上がっていると思います♪

一方でアーノンクール、ラッセル=デイヴィス、ヴェンツァーゴを絶賛しておきながら、180°違うバレンボイムを誉めるとは何事かと言われそうですが、なんせどれも素晴らしんですからしょうがない。

低い重心で勝利を目指してどんどん前進するバレンボイムのブルックナー。実によろしい!


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▼Anton Bruckner Symphony No. 5 in B flat major - Daniel Barenboim and Staatskapelle Berlin



[タグ] 交響曲 ロマン派
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好きなピアニスト - アンヌ・ケフェレックのこと。

ピアニスト、アンヌ・ケフェレックのこと。

CDがたまってきて棚の整理をしていると、ふと思い出がつまったディスクを手にして懐かしくなることがある。

今日は僕が好きなピアニスト、アンヌ・ケフェレックについて。


┃若き日の録音と、パリジェンヌに恋した田舎の青年。

あれはもう10年近く前になってしまうのでしょうか。毎度ながら時が経つのは早く恐ろしい・・・。

きっかけは図書館で借りた1枚のCD。

当時僕はお金がない学生で、図書館でクラシックのCDを借り漁っていたんですが、そのなかの1枚が非常に印象に残りました。

それはアンヌ・ケフェレック(Anne Queffélec, 1948-)が1970年頃にエラートにいれたスカルラッティのディスク。


[スカルラッティ作品集/ERATO/1970録音]


当時は図書館にあるディスクは新しい録音はあまりなくて、モーツァルト以前の音楽は非常に優しく弾かれているのが通例だったような気がします(少なくとも僕が聴いていた範囲では)。

そこへ来てこのケフェレックのスカルラッティ!

ブレンデル、バドゥラ=スコダ、デムスといった人たちに薫陶を受けただけに、おそらく念入りに準備されての演奏だったのでしょうが、当時の僕にはそれが溢れ出る才能を抑えられないと言わんばかりの、才気煥発、天衣無縫といったような言葉がぴったりの演奏に聴こえて、とても衝撃を受けたことを思い出します。

そこに音楽のもつエネルギーみたいなものを感じたのかもしれません。



[バッハ名演集/BMG JAPAN/1985~87年録音]


そこで無い金をはたいて購入したのが、BMG JAPANから出ていた「バッハ名演集」。これはパルティータの2番と5番、それから半音階的幻想曲とフーガをベーゼンドルファーで弾いたCDで、それこそ2番なんかCDが擦り切れるほど(ウソです)聴きましたね。

これも同傾向の演奏でとても素晴らしかったのですが、そのブックレットには若い彼女の写真―まるでアイドルみたいなパリジェンヌがピアノを弾く姿―が収められていました。

それは、田舎出の若い男が、年上の気の強い都会の美人に恋に落ちてしまったようなものでした(笑)。


彼女のために少し付け加えておくと、別に彼女が実際に気が強い女性かどうかは知りません。ただ彼女の才気あふれる演奏が、若くナイーブな(笑)僕にそんなイメージをもたせた、というだけです。



┃近年のミラーレ録音。

今の2枚は若い頃の録音でしたが、近年はMirareレーベルから素晴らしい録音をリリースしています。とろころが、すぐに入手困難になってしまうのがこのレーベルの難点。ですから中古屋さんでヘンデルの作品集を見つけたときは、跳びあがらんばかりに喜んだことを覚えています。


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[ヘンデル作品集/Mirare/2005年録音]

これは有名な「調子の良い鍛冶屋」を含むヘンデルの作品集ですが、この録音を聴くと、前述の2枚の録音から年月がたったことを想わずにはいられません。

温かみがある音で、とても情感豊かに奏でられるヘンデル。これが音楽の核心に迫った演奏で、ヘ短調HWV433の組曲なんか、その音楽の深さは圧倒的で、バロック音楽の鍵盤作品という枠をつきやぶるほど!



[ショパン作品集/Mirare/2009年録音]

もう1枚、Mirareの録音で忘れられないのが、ショパンの作品集。

これはほぼ年代順にショパンの作品を収録したアンソロジーで、最初に収められた若き日のポロネーズからしてとても印象的。

最初の変ロ長調KK.IV/1(1817)なんか、まるでオルゴールでも聴いているかのようなコロコロしたタッチが面白い!かとおもうと、中間部では映画にでも出てきそうな切なさを描き分ける。いくらショパンといえども、7歳の作品からこれほどの豊かな内容を聴き取ったのははじめての経験。

全体的にこのアルバムは彼女の小品を弾くうまさが全開の素晴らしい1枚。もちろん、舟歌や幻想即興曲といったおなじみの名曲も、彼女一流の語り口で楽しませてくれます♪


 *   *   *   *


こうして彼女の一連の名盤を俯瞰してみると、「人間はこれほど素晴らしい年齢の重ね方ができるのか!」と少し希望みたいなものを感じてしまいす。

あまり年齢の話をするのは失礼だけれども、あと半年で70歳になろうかという彼女。方々の記事や映像を拝見する限り、音楽を語る彼女はとても楽しそう。

これからも、その素晴らしい人柄で全力で向き合った音楽で、僕たちファンを楽しませてくれることを期待♪


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▼Scarlatti sonata K492 - L014 Anne Queffelec


▼Chopin Nocturne C sharp minor Op posth Anne Queffelec



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